一度でも経験すれば、二度と味わいたくないと思うのが、メットインへの鍵の閉じ込め(インロック)です。あの、シートを閉めた瞬間の「あっ!」という絶望感は、ライダーにとって悪夢以外の何物でもありません。しかし、このうっかりミスは、日頃のちょっとした習慣や、簡単な工夫で、ほぼ完全に防ぐことができます。高額な業者を呼ぶ羽目にならないための、効果的なインロック防止策をいくつかご紹介します。まず、最も基本的で、かつ最も効果的なのが、「鍵の定位置を決める」という、習慣づけです。バイクを停めて、イグニッションから鍵を抜いたら、その鍵は「必ずズボンの右ポケットに入れる」「必ずカバンのこの内ポケットに入れる」というように、自分の体や持ち物の中で、鍵の「指定席」を厳格に決めます。そして、シートを閉める前には、必ず、その指定席に鍵があることを、指で触って確認する。この「シートを閉める前の指差し確認」を、一連の動作として体に覚え込ませるのです。これが習慣化すれば、インロックの可能性は劇的に減少します。次に、物理的な工夫として、「キーホルダーを目立つものにする」という方法も有効です。大きくてかさばるキーホルダーや、鮮やかな色のもの、あるいは鈴やベルのように音が鳴るものを付けておけば、無意識にメットインの中に鍵を置いてしまったとしても、シートを閉める直前に、その存在感に気づきやすくなります。単純なようですが、人間の「うっかり」を防ぐ上では、非常に効果的です。また、「スペアキーを、常に身につけておく」というのも、究極の防止策と言えるでしょう。自宅の鍵などと一緒に、バイクのスペアキーをキーケースに入れて、常に持ち歩くのです。そうすれば、たとえメインキーをメットインに閉じ込めてしまっても、全く慌てる必要はありません。スペアキーで、何事もなかったかのようにシートを開ければ良いだけです。ただし、この場合、メインキーとスペアキーを絶対に同じキーホルダーに付けないことが大前提です。さらに、最近では、一部のスマートキー搭載スクーターなどで、メットインの中にキーが残っていると、警告音が鳴ったり、シートが完全にロックされなかったりする、インロック防止機能が備わっている車種もあります。