縁側や、広いリビングの間仕切りなどでよく見かける、二枚のガラス戸が中央で合わさるタイプの引き戸。この二枚建て引き戸の施錠に使われるのが、「召し合わせ錠(めしあわせじょう)」です。二枚の戸が「召し合う」部分に取り付けられることから、この名が付きました。その独特の仕組みと特徴を理解しておきましょう。召し合わせ錠は、室外側の戸と、室内側の戸の両方に、対になるように取り付けられます。そして、室内側の錠についている、つまみ(サムターン)を操作することで、施錠・解錠を行います。その仕組みは、こうです。サムターンを回すと、室内側の錠の内部から、スライド式のロックピンや、小さなフック状のデッドボルトが、横方向に「にゅっ」と伸びていきます。そして、そのロックピンが、向かい側にある室外側の戸の錠に設けられた、受け穴に差し込まれます。これにより、二枚の戸が物理的に連結され、左右にスライドさせることができなくなる、というわけです。外側から鍵で施錠できるタイプの場合は、鍵を回すことで、同じようにロックピンが作動します。この召し合わせ錠は、主に「引き違い戸」と呼ばれる、二枚の戸が同じレール上をすれ違うように動くタイプの引き戸で使われます。その構造上、戸と戸の間に設置されるため、錠前本体は非常に薄く、コンパクトに作られているのが特徴です。また、施錠した際に、二枚の戸の隙間を塞ぐ役割も果たすため、気密性を高める効果も期待できます。しかし、防犯性という観点では、いくつかの注意点があります。召し合わせ錠は、あくまで二枚の戸を連結させているだけなので、もし、戸全体をレールから持ち上げて外されてしまうような手口(戸外し)に対しては、無力です。また、ガラス戸の場合、ガラスを割られて、内側のサムターンに手を伸ばされてしまえば、簡単に解錠されてしまいます。そのため、防犯性を高めるには、召し合わせ錠だけに頼るのではなく、前述した「戸先錠」を追加で設置したり、ガラス破りを防ぐための「防犯フィルム」を貼ったり、戸の揺れを防いで戸外しを困難にする「補助錠」を取り付けたりする、といった複合的な対策が非常に重要になります。