鍵をメットインに閉じ込めてしまう「インロック」。これだけでも十分に厄介なトラブルですが、もし、そのバイクが、シートの開閉を電気的に行う「スマートキー搭載車」で、なおかつ「バッテリーが上がってしまっている」としたら。それは、まさに八方塞がり、最悪のシナリオの一つと言えるでしょう。通常のスマートキー搭載車であれば、たとえインロックしてしまっても、車体のどこかにあるスイッチを押せば、シートが開くように設計されています。しかし、そのスイッチも、バッテリーからの電力がなければ、ただの飾りに過ぎません。バッテリーが上がっているため、スマートキーの電波を認識することもできず、シートオープナーも作動しない。そして、肝心のバッテリーにアクセスしようにも、そのバッテリーは、固く閉ざされたメットインの中にある。この、完璧な「詰み」の状態から、脱出する方法はあるのでしょうか。この超高難易度な状況を解決するためには、まず、何とかしてバイクに「外部から電力を供給する」必要があります。そのための方法が、「バッテリーのジャンプスタート」です。他の正常なバイクや、車のバッテリーと、自分のバイクのバッテリーを「ブースターケーブル」で繋ぎ、一時的に電力を分けてもらうのです。しかし、問題は、自分のバイクのバッテリーがメットインの中にあることです。この場合、バッテリーのプラス端子とマイナス端子に、直接ケーブルを繋ぐことはできません。そこで、車体のどこかにある、バッテリーに繋がっている配線を探し出す必要があります。例えば、スターターリレーのプラス端子や、フレームアースのマイナス端子など、車種によってアクセスできる場所は異なります。これには、バイクの電気系統に関する、かなり専門的な知識が求められます。無事に、外部のバッテリーと接続でき、一時的にでもバイクに通電させることができれば、しめたものです。電力が復旧した瞬間に、シートオープナーのスイッチを押せば、メットインを開けることができます。しかし、この一連の作業は、非常に難易度が高く、下手をすれば電気系統をショートさせてしまう危険性も伴います。もし、このような最悪の事態に陥ってしまったら、無理に自分で解決しようとせず、バイクの構造を熟知した、信頼できるバイクショップや、専門のロードサービスに、正直に状況を説明し、助けを求めるのが、最も賢明な判断と言えるでしょう。
鍵をメットインに入れたままバッテリーが上がったら?