引き戸は、開閉に必要なスペースが少なく、バリアフリーの観点からも非常に優れた建具です。しかし、小さなお子さんがいるご家庭では、その引き戸が、思わぬ事故の原因となる可能性も秘めています。特に、「鍵」の存在と、指挟みのリスクには、注意が必要です。子どもたちの安全を守るために、親ができる、引き戸の鍵に関する工夫と対策について考えてみましょう。まず、最も注意したいのが、「指挟み」の事故です。子どもは、大人が想像しないような行動をとります。引き戸の戸先(戸の先端部分)と、柱との間に、指を入れたまま、誰かが勢いよく戸を閉めてしまったら、大怪我に繋がる可能性があります。戸先錠が付いている部分は、特に注意が必要です。このリスクを軽減するために、様々な「指挟み防止グッズ」が市販されています。戸の側面に貼り付ける、クッション性のあるストッパーや、戸が完全に閉まりきる手前で、ゆっくりと閉まるようにする「ソフトクローザー」機能の後付けなどが有効です。ソフトクローザーは、指挟みを防ぐだけでなく、戸がバタンと閉まる大きな音も防いでくれるため、一石二鳥です。次に、子どもによる「鍵のいたずら」への対策です。子どもは、大人の真似をして、鍵をガチャガチャと操作するのが大好きです。もし、子どもが自分で内側から鍵をかけてしまい、開けられなくなってしまったら、閉じ込め事故に繋がります。これを防ぐためには、子どもの手の届かない、高い位置に、補助的な内鍵(スライド式の簡易ロックなど)を追加で設置するのが効果的です。また、召し合わせ錠のサムターン(つまみ)なども、子どもにとっては格好の遊び道具です。不用意に触れないように、言い聞かせることも大切ですが、物理的に触れなくする「サムターンカバー」なども市販されています。さらに、玄関の引き戸などでは、子どもが勝手に鍵を開けて、一人で外に出てしまうという、最も避けたい事態も考えられます。これも、高い位置への補助錠の設置が、極めて有効な対策となります。引き戸の利便性を享受しつつ、その裏側に潜むリスクを正しく認識し、先回りして対策を講じること。それが、子どもたちの笑顔と安全を守る、親の重要な務めなのです。
引き戸の鍵と子どもの安全(指挟み防止など)