毎日のように使う、玄関の引き戸の鍵。ある日、鍵を差し込んで回そうとしたら、ガリガリと嫌な音がして回らない、あるいは、びくともしない。そんなトラブルに見舞われたら、家に入れず、あるいは家から出られず、途方に暮れてしまいます。玄関引き戸の鍵が回らなくなる原因は、一つではありません。その原因を探り、適切な対処法を知っておきましょう。まず、考えられるのが、「鍵穴(シリンダー)内部の問題」です。屋外に面した玄関の鍵穴は、雨風や砂埃に常に晒されています。鍵穴内部に、ホコリや小さなゴミ、金属の摩耗粉などが溜まると、内部のピンの動きが悪くなり、鍵が回らなくなります。また、長年の使用による経年劣化で、潤滑が切れてしまっていることも、大きな原因です。この場合の応急処置としては、まず、掃除機のノズルを鍵穴に当てて、中のゴミを吸い出してみます。その後、「鍵穴専用の潤滑剤(パウダースプレー)」を、鍵穴に少量吹き付け、鍵を何度か抜き差しして、潤滑剤を内部に行き渡らせます。これで、動きが改善することがあります。絶対に、市販の油性潤滑剤は使わないでください。ホコリを固めて、症状を悪化させます。次に、「錠前本体、あるいは受け座(ストライク)の位置のズレ」です。引き戸は、建物の歪みや、戸車の摩耗などによって、年月と共に、その建付けが微妙にずれてくることがあります。すると、戸先錠から出るデッドボルト(鎌)と、柱側のストライクの位置が合わなくなり、デッドボルトがストライクに干渉して、鍵が回らなくなるのです。この場合は、ストライクの位置を調整する必要があります。ストライクを固定しているネジを緩め、適切な位置にずらしてから、再度締め直します。ヤスリでストライクの穴を少し削ることで、干渉をなくす方法もありますが、専門的な技術が必要です。また、「鍵本体の変形や摩耗」も、原因となり得ます。特に、精度の低い合鍵を使っていると、トラブルが起こりやすくなります。スペアキーで試してみて、もしスムーズに回るのであれば、原因は普段使っている鍵にあると考えられます。これらの対処法を試しても改善しない場合は、錠前内部の部品が破損している可能性があります。無理に力を加えると、完全に壊れてしまうため、速やかに専門の鍵屋さんに相談するのが、最も賢明な選択です。