単に「ブランクキー」と一言で言っても、その世界は驚くほど奥深く、多種多様な種類が存在します。普段私たちが目にするのは、その膨大な種類の中のほんの一部に過ぎません。ブランクキーの種類は、大きく分けてその形状と用途によって分類されます。最も古典的で一般的なのが、片側あるいは両側がギザギザの形状をした「刻みキー」用のブランクキーです。古くからの住宅や簡単なロッカーなどで広く使われており、ホームセンターなどで最もよく見かけるタイプです。しかし、近年では防犯性の観点から、より複雑な構造の鍵が主流となっています。その代表格が「ディンプルキー」です。この鍵は表面に大きさや深さの異なる複数のくぼみ(ディンプル)があり、ピッキングによる不正解錠が非常に困難です。そのため、ディンプルキー用のブランクキーも、元となる鍵のメーカーや型番によって、表面の形状や厚みが厳密に定められています。また、「ウェーブキー」と呼ばれる、鍵の側面に波のような曲線状の溝が彫られているタイプもあります。これは主に自動車の鍵で採用されており、対応するブランクキーもその特殊な形状をしています。さらに自動車の鍵で言えば、内部にICチップが埋め込まれた「イモビライザーキー」が普及しています。この場合、ブランクキーにもチップを内蔵するスペースが必要で、単に金属部分の形状をコピーするだけではエンジンがかかりません。鍵を削った後に、専用の機器で車両情報とチップの情報を登録(イモビライジング)する作業が不可欠です。このように、ブランクキーは単なる金属の塊ではなく、その時代ごとのセキュリティ技術の進化を反映した精密な工業製品なのです。それぞれの鍵が持つ独自の安全性を維持するため、それに適合する正しいブランクキーを選ぶ知識と技術が求められます。
奥深いブランクキーの世界とその種類