エンジンをかけようと、キーシリンダーに鍵を差し込んで回した、あるいは、エンジンを切って鍵を抜こうとした、その時。信じられないことに、車の鍵が、根本からポッキリと折れてしまった。エンジンもかからず、鍵も抜けない。車はただの鉄の塊と化し、その場から一歩も動けない。この、玄関の鍵折れとは、また違った種類の絶望感をもたらすトラブルに、どう対処すれば良いのでしょうか。まず、大前提として、玄関の鍵と同様に、「自分で取り出そうとしない」ことです。車のキーシリンダーは、玄関の錠前よりも、さらに複雑でデリケートな構造をしています。無理にいじれば、ステアリングロックの機構などを破損させ、修理費用がさらに高額になる可能性があります。この状況で、あなたが連絡すべき相手は、主に二つあります。「ディーラー」か、それとも「車の鍵を専門とする鍵屋さん」か。どちらを選ぶかで、時間と費用が大きく変わってきます。まず、「ディーラー」に依頼する場合です。レッカーで車をディーラーまで運ぶ必要がありますが、最も確実で、安心な方法と言えます。ディーラーであれば、その車種の構造を熟知しており、キーシリンダーを分解して、安全に折れた鍵の破片を取り出してくれます。もし、シリンダーの交換が必要になった場合も、純正部品で対応してくれます。ただし、レッカー代がかかること、そして修理に数日かかる場合があることがデメリットです。次に、「専門の鍵屋さん」に依頼する場合です。最大のメリットは、現場まで出張してくれ、その場で作業を完結させてくれる「スピード」です。多くの場合、数時間後には、車を動かせる状態に復旧させてくれます。レッカーも不要です。彼らは、特殊な鍵抜き工具を使い、キーシリンダーを分解することなく、破片を取り出す技術を持っています。費用も、ディーラーに依頼するより、安く済む傾向があります。しかし、業者によって技術力に差があるため、信頼できる業者を見極める必要があります。もし、折れた鍵が「イモビライザーキー」であった場合、話はさらに複雑になります。破片を取り出した後、新しい鍵を作成し、さらにその鍵を、車両のコンピューターに再登録する作業が必要になります。この作業に対応できるのは、ディーラーか、あるいは専用の機材を持つ、高度な技術を持った鍵屋さんだけです。